中央線沿線で様々なアートイベントを展開しているTERATOTERA(テラトテラ)が、街中でのアート展をはじめ、音楽ライブやパフォーマンスなどを盛り込んだ大規模展覧会「TERATOTERA祭り」を開催します。2011年度から始まり9度目となる今回は、11月8日、9日、10日の3日間、三鷹駅周辺の空店舗など9カ所を舞台に開催!9組のアーティストたちが、インスタレーションやパフォーマンス、絵画や映像などの作品を発表します。TERATOTERAならではの作品体験をぜひお楽しみください。
選択の不自由
今回のテーマを決める話し合いで、Teraccollectiveメンバーの一人が、最近の出来事として、自分が正しいと思っていることを声高に言えないことがあったと口にした。理由は、周囲との関係性だったり、習慣に従わざるを得ない雰囲気があったりしたからということだった。暗黙のルールによって、自由に、心のままに選択ができない状況が語られた。
私たちの日常は、程度の差こそあれ、目の前に現れる選択の連続ともいえる。今の自分は、これまでの選択という点を結んだ線上の最先端に存在している。メンバーが経験したこの不自由な状況は、誰にでも起こりうることだ。
広辞苑で「自由」という言葉を引くと、「自由は一定の前提条件の上で成立しているから、無条件的な絶対の自由は人間にはない。自由は、障害となる条件の除去・緩和によって拡大するから、目的のために自然的・社会的条件を変革することは自由の増大である」と記されている。その意味では、私たちが日々、所与の条件の中で重ねている「選択」は、必ずしも自由ではない。むしろ、かなり不自由なものかもしれない。
この「選択」という行為が、人々の幸福度に影響を与えることを国連の関連団体が発表している「世界幸福度レポート」にも示されている。経済指標だけで見れば上位にあるはずの日本の幸福度は、意外にも低迷している。2012年の調査開始以来、年々下がり、最新の2019年版では156ヵ国中58位と、先進国の中では最低レベルだ。幸福度ランキングは6つの指標から決定されるが、日本の幸福度を押し下げている指標の一つが「人生における選択の自由度」(64位)なのである。
さらに、日本の現状は「選択の不自由」にさらなる拍車をかけてしまっているようにも見える。例えば、政治家の意思を「忖度」した選択によって、スキャンダルでメディアを賑わすことになった官吏は今や珍しくない。国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」では、脅迫的な内容のファクスや電話、メールによって、実行委員会が企画展の中止という苦渋の選択を強いられたことも記憶に新しい。
私たちは現代社会の「選択の不自由」にどう向き合えばいいのだろうか。答えを見つけることはそう簡単なことではない。今回の展覧会では、参加アーティストに来場者が鑑賞する際、何かを選択する仕組みを盛り込んでほしいと依頼した。アーティストはこの投げかけにどのような表現で応え、鑑賞者はその表現にどう向き合うのか。そこから「選択の不自由」をめぐる思考と対話が広がることを期待したい。
Teraccollective
Teraccollectiveとは
TERATOTERAのボランティアスタッフであるテラッコの歴代コアメンバー16名によって2018年に設立しました。メンバーの職業、年齢、性別は様々ですが、アーティストやアートの現場を支援し共に作り上げていきたいという強い想いを共有しています。TERATOTERA祭りは、2018年からTeraccollective(テラッコレクティブ)が手がけています。今後も、裏方だけのコレクティブとして、アートにまつわる様々な人や現場を支え盛り上げていきます。