絵画は瀕死状態なのか⁈千葉さんが考える絵画の現在形と今後の展望とは「アートプロジェクトの0123」第5回講義レポート

11/2に開催した「アートプロジェクトの0123」5回目の講義は、画家の千葉正也さんを講師にお迎えして「絵画の危機と展望」をテーマにお話しいただきました。今年1/16~3/21まで、東京オペラシティアートギャラリーで開催された個展のお話から、過去に参加されたアートプロジェクトについて、アートディレクションを担当したテラコレゆかりのあの場所についてのお話も伺いました。

<オペラシティで開催された個展について>
千葉さんは、この個展を回顧展にしようと決め、まず、これまでの自分の作品をどのようなかたちで見せるべきかを考えました。そして、展示会場に自分が飼っている「亀」を登場させ、亀の目線で観客にも作品を見てもらう形態を取りました。それは、亀が持つゆっくりとした時間性を取り入れることで、「ゆっくりと作品を楽しんでもらいたい」という思いのほかに、人が見るペースとは違う時間軸を会場内に作る狙いがあったそうです。作品の展示方法も人間よりも亀にとって見やすい構造になっていました。壁には小さな四角い穴があったのですが、亀の通路を作るために、会場であるオペラシティのご理解のもと、壁をくりぬいてしまったのだそうです!
亀が歩みを進めて行く先にあった、巨大な2枚の絵についても説明してくださいました。あの作品は、「平和な村」というタイトルの絵で、2006年から同じタイトルで定期的に書いている連作のうちの2つになります。紙粘土や木などで作ったモチーフをパフォーマティブに扱い、連作にすることで、そのシチュエーションや経過した時間、そのモチーフが過ごした時間も込みで、ペインティングをしていくという作品です。別の作品で何度も書かれたモチーフもあり、何回も書くことで、アーカイブやポートフォリオがつくられていきます。千葉さんの作品の特徴的な手法と言えます。
https://www.operacity.jp/ag/exh236/j/introduction.php

<千葉さんが考える絵画の危機と展望 >
今回のテーマについて話を進める前に、千葉さんがこれまで絵画(ペインティング)を続けて来た理由として「自分は、メディアとして単純に絵画が好きで、絵画というメディアが一番面白いと思っていて、その面白さみたいなことをずっと考えて、いろいろなことを試してきたりしました。こういう風に絵画を扱ったら、絵画の面白さを確認できるというような試み、ひっくり返したり、それをビデオで撮ったり、持って街を歩いたりなど、いろんなアプローチでやってきました。」と仰いました。
絵画は、これまで何度となく「瀕死の状態にある」「死に体だ」と言われてきた一方で、「ニューペインティングの出現」や「復活・回帰」というような抗議的な意見も出現し、これら意見の交錯が繰り返されてきました。ペインターとして精力的に活動を続けてきた千葉さんが、アート界における絵画の今について、どのように考えているのか伺ったところ、次のようにお話されました。
「『絵画の死』というのは、ひとつの言葉遊びに過ぎないと思っていて、でも絵画というメディアが現代のいろんなことをうまく伝えられないというのは、そうなのかなとは思います。けれど、それでも絵画が無くなるということは有り得ないです。それは例えば、文学がなくなるということも有り得ないし、ましてや言葉がなくなるなんてことはないというのと同じことだと思うのです。ペインティングが『こういうものだね』『この程度のものだね』と言われていること、それが世界的に常識になっていることは、ある意味好都合だとも思うのです。政治でもなんでも『人が集まる力学』があるように、絵画にも力学みたいなものがあると思います。キャンパスに油彩というような、従来の絵画の形式に留まらず、リレーショナルアートなどのように、絵画が持つエネルギーが派生して形を変えているものもあります。美術はゲームみたいなところがあり、ペインターとしてそのゲームに参加しているのだと思えば、実のところそんなにネガティブな状況ではないと考えています。」

<アートディレクションについて>
吉祥寺東町にあるアートセンターオンゴーイングは、ディレクター小川 希さんが海外研修で留守の間、1階のカフェスペースは飲食店に姿を変えています。複数人で担当していて、日替わりでお店の内容が変わるという趣旨です。千葉さんは、お店の内装のアートディレクションを担当していますが、後でアーカイブして作品にする予定なのだそうです。この0123の講義をオンゴーイングからお届けする際には、映り込む鮮やかなピンクの壁に驚かれる受講生も多くおられたと思います。アーカイブがどのような作品になるのかとても楽しみです!

また、オープンスタジオ(相模原のSUPER OPEN STUDIO)のメンバーとしても活動されています。この講義が行われた週の週末11/6・7に、野外展「OPEN STUDIO21」が開催され、千葉さんも参加されました。

映像やインスタレーション、アートディレクションやオープンスタジオのような活動は、やがて絵画へ結び付くものとして世の中から見られるようになってきたので、今後もこういった活動を続けていきたいと考えているそうです。

・アートディレクションを担当した「指入湯 finger in the soup」(Art Center Ongoing内)
https://www.instagram.com/finger_in_the_soup/
・Super Open Studio NETWORK
https://www.superopenstudio.net/
・Lucky Happy Studio
https://www.instagram.com/luckyhappystudio/

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