「アートプロジェクトの0123」レクチャーコース第2回講義(卯城竜太さん)を振り返って

 「アートプロジェクトの0123」のレクチャーコースの第2回目は10/25(火)に卯城竜太さんを講師に迎えました。卯城さんはアーティスト・コレクティブ「Chim↑Pom from Smappa!Group」のメンバーのおひとりです。アーティスト・コレクティブとはアーティストたちが協働する集まりのことです。Chim↑Pom from Smappa!Group(以下「チンポム」)のメンバーは6人で、現代日本のアーティストの中でも先鋭的というポジティブな意味で取扱注意の現代アート作家・コレクティブのおひとりです。

 今回レクチャーはチンポムの現在までの作品のご紹介というよりは、制作やコレクティブということに関する考え方を中心としたお話しをいただきました。

 まずは、前回レクチャーの小川希さんからも話題となった、アートマーケットとソーシャルな表現(アート・アクティビズム)の相性の悪さについてです。卯城さんたちは、アート・アクティビズム的傾向が強い活動・作品を制作されていますが、決してアートマーケットに背を向けてはいません。それぞれのアートプロジェクト(アート活動・作品)ごとにふさわしいファンドレイジングを考えています。企業協賛やドネーション、クラウドファンディング、アートマーケットなどあらゆる選択肢の中から適切な資金バランスを見いだしているとのことで、そこが今年のドクメンタ15の芸術監督ルアンルパと違う点だともお話しされていました。普段あまり耳にすることのないアーティストの台所事情がお聞きできる貴重なレクチャーでした。また、その中で今年の2月から5月に森美術館であった個展でのチンポムの改名の経緯についてもお話しが伺えました。

 次にアーティスト・コレクティブというあり方に関する考えについてです。チンポムは6人それぞれが個人の活動も行っており、コレクティブとしての活動はそういうバラバラな人間が協働しているということです。そのことからリーダーがいない、テーマやビジョンを持たない、長期計画も持たないという形態になっています。そして活動と作品という二項対立とは考えておらず、それを乗り越えたいとのことでした。また、日本の戦後現代美術史の研究者 富井玲子さんの「オペレーション」という概念(作家が作品を社会に出す作業)も重視しているとの発言もありました。

 最後に、最近、美術館のオルタナティブというものがあるとすれば、どういうものなのか、例えばギャラリーのような一過性に対する継続性という面において考えているという、興味深いお話しもでました。

 卯城さんの理論的で研究熱心、視野の広さも感じられたレクチャーでした。なお、近著『活動芸術論』(イースト・プレス、2022年7月)に今までの活動について詳しく書いてあり、今回のレクチャーに関連して参考になるとのこと。早速購入し熟読中です。(Mutoh)

【参考】
卯城竜太さんの著書『活動芸術論』の書評
https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/ushiro-ryuta-chim-pom-bookreview-2022-09

同じく著書『公の時代』(朝日出版社、2019年9月)に関連する対談
https://bijutsutecho.com/magazine/series/s16/18854

 — レクチャーコースは今年度は一部対面で講義を行っており、来場者からもオンライン受講者からも、様々な質問をいただきながら進めています。また、受講者はアーカイブも一定期間ご覧になれます。

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